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【技能実習生問題】個人用メモ

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11月20日に開催されました、司法修習生フォーラム分科会「技能実習生問題」に参加しました。

その際に作成した手控え用のメモを、事務局の許可を得て公開します。

 

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司法修習生フォーラム 技能実習生問題

講師:吉水慈豊氏(日越いもいき支援会代表理事)、斎藤善久教授、技能実習経験者

 

1.技能実習生支援現場の現状(吉水氏の報告)

ともいき支援会:日本在住のベトナム人(留学生)の支援 「在留ベトナム人の駆け込み寺」

3年間で、全国で技能実習生150人が命を落としている現状を知る、20~30代の若者が多い

ベトナム人のSOS―借金、失踪、妊娠中絶、社会生活、ハラスメント、賃金等多岐にわたる

支援活動:雇用主やベトナム人からSNSで依頼相談受ける→支援会で人道支援・広報活動・ケア

場合によっては政府・マスメディアに報告書や議案提出

従来は失踪後にSOSが初めて来たため対応できなかったことが多かった

現在:就労支援が180件、ベトナム人保護が410件(今年)、法律支援が13件、医療支援が18件

 

・制度の闇(既にマスメディアで報道済みの一例)

家族に家を建てるために来日、コロナの影響で仕事激減

管理団体から東京に行くよう指示されたが、誰も来なかった

姉を頼ったり借金をしたりして、お金が尽きてしまいNPO法人を頼ることになった

支援会は管理団体と交渉 実習生は日本人が怖くなり、借金を背負ったまま帰国することに

 

 

2.技能実習関連制度の概要(斎藤教授の報告)

斎藤教授―顧問として通訳などに携わる

 

技能実習制度―①企業独立型と②管理団体型(問題になっているのは②)

制度の建前:外国人が母国でやっていた就業を、近代化した制度の下で深めてもらい帰国後に役立ててもらうもの

始まりは1996年、98年に法改正、法整備(外国人研修制度)―あくまで研修の枠内

1998年に法務省告示247号、管理団体型の制度が構築される

問題―労働法の適用除外、制度を「生き残り策」としか利用していない企業多い

国内外から批判、政府としては長期にわたり働いてもらいたい

在留資格の特定活動として技能実習を設ける(法務省告示で)

技能実習の期間を2年に延ばし、研修1年間については労働法適用外

 

2010年に技能実習制度を構築(実習期間を3年間に延ばす)、国内外から批判

2017年に技能実習法を制定(期間を更に延ばすように)

法律ができても、前提の制度自体がフィクション→問題がむしろ膨大に

2019年の入管法改正、特定技能制度で対象業務を更に広げる

 

3.パネルディスカッション

・世間のイメージする技能実習制度と現場での実情の違い

現場―問題が多すぎるが、全ての事業者に問題があるわけではない

世間―報道ベースでみる以上、先入観が構築されてしまう

報道でも明らかにならない、現時点で把握していないもっと問題なケースがあるかもしれない

 

肌感覚―割合の問題ではない、完全に国際貢献のために行っている事業者は皆無

7割の事業者では特に問題が生じていない、建築現場では多く問題(失踪等)が起きている

建築については来る実習生にも問題がある

(面接なしにすぐに来日することができる、真に適性が分からない、文化の違いが顕著)

 

・特定技能制度創設後の変化

コロナ前:最初は人気なかった(試験があるので管理団体も希望者にレクチャーする必要)

転職の自由があるので事業者も雇うのに躊躇する

 

・コロナの影響

世間が思っているほどコロナによる影響は、留学生よりはなかった

在留資格に影響しない、就労場所が都市部から離れている

帰国ができなくなった問題はあった→管理団体が居住場所を確保、ビザ発行した

帰国が困難になる状況が長引くことはNPOも予期していなかった→法務省に対し要請

ただ就労外においての管理が厳しくなった(外に出て反政府デモができない)

 

・管理団体・送り出し機関・技能実習機構の現状

NPOと管理団体(派遣会社)との連携―HPを通じてコンタクト、スムーズに支援

制度上、職安法に抵触する恐れがある(正面から対立すると問題解決が難しい)

 

・成功例(制度上のメリット)はないか

定義の問題、何事もなく研修受けて帰国してよかった…でいいのか?

来日後にとび職に、努力して日本語検定試験を受け、長く日本で就労するため就職したケースもあった

来日する背景にはベトナムの政治体制がある、支援の手段は技能実習制度である必要はない

 

・ケース

多くは借金を抱えて来日するが、返せないまま帰国するケースは少ない

ただ実習生の2%は失踪している現状

 

技能実習生と刑事裁判

八千代夫婦殺傷事件―被告人は農業実習生、公訴事実を否認

裁判員裁判対象事件であるため、報道が心証に影響する可能性

 

ただ、悪質重大事件はごく一部(ほとんどはオーバーステイ等軽微事件)

検挙件数も増えているが、これは捜査機関がオリンピック等を背景に態度を厳しくしたため

 

日本人でベトナム通訳ができる人がいいという判断から、斎藤教授が通訳人に

通訳の問題もある(正確に訳されたとしても、母国の文化等から双方誤解する可能性)

Ex.枕の下に魔除けとしてナイフを入れる

 

・今後の課題

技能実習生―借金問題、日本語能力要件の設定、転職制限の緩和、民間人材ビジネスの排除

特定技能の課題―支援策の整備拡充、転職可能(※信頼関係の構築)、在留条件の緩和

「責任ある受け入れ」が必要

そもそも日本人が安心して長期間働ける労働条件の構築が必要ではないか?(産業構造、行政)

 

希望者に対して厳しく指導していく必要(日本語、文化、習慣)―守ってくれる人がいない現状

受け入れ先―古くからの慣習は通用しないことを説明(体罰等)

 

 

4.技能実習経験者の声

実習のきっかけ:手っ取り早く稼ぐことができる、元手を基にベトナムで就職

実習に対するイメージ:日本で真面目に頑張り、社長とも親しくなれる

なぜ日本に?:現代的に発展しており、多くの実習生も来日している

実習に関する情報がベトナムに入ってきたか:ほとんどなかった

 

来日前の生活状況:農業、食べるのに精いっぱい(三人の弟と妹の学費を払う)

来日前の手続:送り出し機関に100万以上費用を払い、日本語を6か月間学ぶ(手続は期間が行う)

費用は親戚から借金

職場環境について:鹿児島で農業、屋内外で作業をしたが社長はよくしてくれた

勤務時間:朝8時~夕方5時30分頃、週休二日(残業あって一日就業することも)

残業代の支払:割増賃金の支払いはあった(通達で、例外的に割増賃金を払うことになっている)

 

文化の違い:180度違った、日本は田舎で静か

ベトナムは中国の影響を受けているが、日本はどちらかというと欧米寄りの解放された雰囲気

実習生のコミュニティー:来日前に実習先の人々と付き合い、鹿児島でも現地の人たちと交流

どこに住んでいたか:一軒家、1Fに大家のおばあさん、2Fに居住(実習生9人→5人)

実習生同士のトラブル:話し合いで何となく解決

 

特定技能の資格での仕事:終了後は帰国しようとしたが、コロナで帰国できずまた生活にも慣れたため他の分野の仕事をしようと思った

困ったこと:特定技能については試験があるが、試験受験は抽選制(受験できなかった)

日本人・他のベトナム人実習生から差別的取り扱い(残業させない、休憩時の食事支給なし、通勤強制、他人のミスを押し付けられる)

職場では日本人とベトナム人の関係:良好、殴り合い等の喧嘩はなかった

支援を受けたきっかけ:日本人の同僚がNPOを紹介

 

日本に対するイメージの変化:少し変わった

前:桜等自然が美しいイメージ(映像による)

後:日本の生活はベトナムよりも静か 日本人は真面目に働くし、時間を守る

日本はいいところもあり、悪いところもある

 

今後の展望:少しでも長く日本で働き、勉強していきたい

ベトナムが母国なので帰国はする予定

 

 

5.質疑応答

労働法の適用有無:全面的に適用される(特定技能実習制度)

実地検査について:検査の結果、業務停止によって働けなくなることを恐れて実習生が報告を控える問題点

技能実習の職種選定:入管法改正のタイミングで、某番組の報道で繊維については除外された

選定についてはかなり適当にされている可能性

建築・造船―仕事内容が類似、造船業界が反発して対象となった?

顧問活動の意義(斎藤教授に対して):社会の現場を見る必要性

雇用許可制(韓国)の導入可能性:変えたら全部解決するわけではないが、だからといって技能実習制度を維持するのは問題

雇用許可制は、技能実習制度を一度取り入れて問題が生じたため導入

人材ビジネスの排除を目的としたが、完全に排除できたわけではない

 

ベトナム国内での問題提起の可能性:軍政府との癒着もあるが、リークされることも

紹介料100万円の名目:ない、領収書が一回発行されてなかったことになることも

妊娠中絶問題:NPOでは、病院で処置するよう指示している

会社に中絶のことをいえず、リスクの高い中絶薬に頼らなければならない現状

Bに対して:弁護士ではなく、「法律に詳しいおじさんおばさん」としてこちらに関わってほしい(弁護士の枠に囚われない)

労働組合:一応ある コミュニティユニオンに駆け込む人が多い

モチベーション:制度に対する怒り

 

ベトナムの状況:戦争からの復興、いずれ日本に追い越されるのではないか

政府に対して:表立って反対反対と言うと反発を招く、悪い事例を紹介して問題提起

場合によってはマスメディアも活用

技能実習制度全てが悪いわけではない(制度の下で頑張っている研修生もいる)

入管の裁量が大きい→問題事案について窓口に告発、窓口に対して上(本庁)に上げるよう指示

 

日本人に対するメッセージ(経験者に対して):もっと日本人の人々か関わりたいが、外部の人たちに対してもっと開放的になってほしい

 

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(感想)

参加するまで技能実習制度に対しては負のイメージしか無く、冒頭に日本で亡くなったベトナム人の実習生の位牌・遺影・遺骨がずらっと並んでいる写真を紹介されたときはかなりいたたまれない気持ちになった。しかし、実際に技能実習経験者のお話を伺う中で、果たして制度全部を無くすことが当事者にとって喜ばしいことなのか?と思うようにもなった。

雇用条件については近年問題になってはいるが、諸外国に比べれば日本の雇用環境は決して劣悪ではなく、また治安も(相対的に)良い。実習生を受け入れつつも、紛争が生じないよう申込段階での審査を厳格にする、受入先に対する監督を行政が行う、管理団体の条件を法律で厳格に定める等の手当てが必要だろう。また、実習生に対しては日本国民と同様の憲法上の権利が保障されるべきではないか(参政権生存権等)。

以下余談であるが、平成28年の司法試験論文式試験憲法では、技能実習制度そのものではないものの、外国人労働者の受入れに関する架空の法律の合憲性が問われている。内容も滞在期間を3年間・滞在中の妊娠出産を禁止と技能実習制度にもあてはまる問題が織り込まれており、(試験対策として)日々の社会問題に関心を持つことの重要性を実感した。

 

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次回は「生命に関する自己決定」の講演に参加する予定です。

スケジュールの関係上、次回の更新で最後になると思います。

招待URLが送られてこなかったのでキャンセルです(11/21追記)

送られてきたので一応書きます(さらに追記)