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司法試験までに使用した基本書と演習書

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呪術は1巻だけ読みました

 

こんにちは。

司法試験を受験した記事↓にこのようなコメントを頂きました。

lawschoolreport.hatenablog.com

 

 

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色々と一段落つきましたし、後日書く合格体験談では過去問と予備試験について中心に触れるつもりですので、今回は使用した本の紹介をしたいと思います。

科目別に基本書→演習書の順に紹介します。それではどうぞ。

 

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憲法

〇基本書

木下智史・伊藤建『基本憲法Ⅰ 基本的人権』(日本評論社

芦部信喜高橋和之補訂『憲法』(岩波書店

 

権利内容、権利の制約の可否、制約の限界、関連判例の動向がコンパクトに、かつ分かりやすくまとめられている。制約の限界については判例を批判して厳格な立場に立つ記述も多い(目的効果基準や検閲の意義など)ので、判例をたたき台にして論証を展開したい受験生には嬉しいかもしれない。

また章末に演習問題(内容はかなり実践的)と簡単な解説も付いているので、読み込むことで、答案作成のイロハを学ぶことができる。

 

 

芦部憲法は直前期の短答用として使用。補訂部分も含め1冊通読しておけば、殆どの問題には対応できる。見た目とは裏腹に読みやすいのもいい。流石放送大学のテキストといったところか。

 

〇演習書

大島義則『憲法ガール Remake Edition』『憲法ガールⅡ』(法律文化社

宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開』(日本評論社

 

過去問ベースで勉強していたので、演習書ではないが紹介。

法律系ライトノベルの金字塔というべき作品。司法試験で問われる「未知の問題に対して既存の判例を取っ掛かりとして論証を進める」姿勢を、小説形式で学ぶことができる。解説の全てを理解し答案に表現することは難しいものの、憲法問題の思考過程をこれほど詳細に説明した本は他にないと思う。

若干出題趣旨や採点実感から外れた記述もあるため、演習後、出題趣旨等を参照した上で読みたいところ。

 

これは図書館でコピーして読んでいたが、余力があればでいいと思う。学生がやりがちな「ダメ答案」を叩いて解説する本で、反面教師として一読するくらいでいい。

 

 

行政法

〇基本書

櫻井敬子・橋本博之『行政法』(弘文堂)

 

近年の行政法は、学部ローで勉強する基本的な概念をこねくり回して解答させる問題が続いているので、基本書はサクハシ一冊で足りると思う。黒と青の二色綴りでどこが重要ポイントか分かりやすい。

 

〇演習書

大島義則『行政法ガールⅡ』(日本評論社

 

内容は憲法ガールとほぼ一緒。この本では、最近よく言われる「法令の仕組み解釈」を割と丁寧に解説している。また主人公(とそのヒロイン)の理解度も憲法ガールと比較して落としている気がするため、こちらの方が読みやすいのではないか。

無印の方は、取り扱っている問題が近年の傾向と離れていること、出来がⅡと比較してよくないことから使わなかった。

 

 

民法

〇基本書

佐々間毅『民法の基礎1 総則』(有斐閣

安永正昭『講義 物権・担保物権法』(有斐閣

潮見佳男『プラクティス民法 債権総論』(信山社

    『ライブラリ基本講義 債権各論ⅠⅡ』(新世社

窪田充見『家族法民法を学ぶ』(有斐閣

 

民法については、債権法家族法改正に対応しているやつであれば何でもよい。

比較的説明内容が分かりやすいものを購入し、辞書代わりに使っていた。

 

 

〇演習書

平野裕之『新・考える民法Ⅰ~Ⅳ』(日本評論社

 

さようなら、全ての民法演習書とはならない、泣く子も黙る鬼難易度の演習書シリーズ。問題になる論点の数もさることながら、「こんなの気付かねえよ」と思わせる場合分けの指示。旧司法試験の問題を無理やり新司法試験用にアレンジしてみたというスタンスなので、司法試験に対して本当に役立ったかは不明。

 

 

会社法

〇基本書

岡伸浩『会社法』(弘文堂)

会社法

会社法

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ローでこれ使っている人を私以外に見なかったが、会社法の基本書としてこれを推していきたい。

著者は企業法務を中心に取り扱う現役の弁護士で、かつて伊藤塾で教鞭を執っていた。一章一章が細かくまたページ数も多いが、その分説明が詳細でなおかつ分かりやすい。論点に対しては、「Aという説がある一方、Bという説もある。~という理由で私はA説(C説)に立つ」という説明がなされており、論証に使えるのがよい。

また随所に重要判例の事案判示の要約があるため、直前期に百選を使用しなくてもこれ一冊でインプットを済ませることができる。

近年会社法の改正があったものの、司法試験上重要ではないため今でも十分に使える。もっと評価されるべき。

 

〇演習書

前田雅弘・北村雅史・洲崎博史『会社法事例演習教材』(有斐閣

 

ローの講義で使用していたものを引き続き使用していた。主要な論点はこれ一冊で押さえることができるが、解答例が無いので自主学習には不向き。

 

 

民事訴訟法】

〇基本書

瀬木比呂志『民事訴訟法』(日本評論社

 

最近人気のせぎみん。着目すべき点は、学生が学習において陥りやすい間違いを指摘し、それに対するフォローを加えている点か(例えば既判力が後訴に及ぶかの判断における、判決内容の同一・矛盾・先決関係について)。

また長年民事裁判官として勤務していたこともあり、実際の実務の動向を知ることができる。難解な民事訴訟の理解の助けになるかもしれない。

 

〇演習書

山本和彦編著『Law Practice 民事訴訟法』(商事法務)

 

司法試験の民事訴訟法の傾向は、昔から「民事訴訟の概念や趣旨をベースに限界事例について考えさせる」ものであるから、基本的な用語の意義や趣旨をマスターすることが肝要。

その点でいえば、ロープラレベルの演習書をしっかりこなしていれば現場で戦えると思う。論点の数も多いし。

問題構成→解説を読む→必要に応じて基本書や百選を読む感じでやればいい。

 

 

【刑法】

〇基本書

大塚裕史・十河太朗・ 豊田兼彦・塩谷毅『基本刑法ⅠⅡ』日本評論社

 

下手に学者の本を買って迷路になるよりも、大人しく基本刑法買って辞書代わりに参照した方がよい。

今年は出題が無かったが、学説対立問題(異なる結論になる、対立する見解を述べさせたうえで自説を書かせる問題)に対しても、ちゃんと通説と有力説が紹介されているので対応できる。

 

〇演習書

安田拓人・橋爪隆・佐伯仁志・井田良『刑法事例演習教材』(有斐閣

 

会社法事例演習教材と殆ど同じだが、こちらは解答の道筋(適用すべき条文や触れるべき論点、簡単なあてはめ)が解説として書いてあるので、自主学習に耐え得ると思う。最近改訂され、最新判例へのフォローもされた。

 

 

刑事訴訟法

〇基本書

宇藤崇・松田岳士・堀江慎司『LEGAL QUEST 刑事訴訟法』(有斐閣

 

ローの友人が「刑訴はリークエがいい」と言っていたので購入した。出来にムラがあるリークエシリーズだが、刑訴法については自信をもっておすすめできる。

通説を採りながら捜査実務を批判するスタンスで書いているので、司法試験に使いやすい。

 

〇演習書

古江頼隆『事例演習刑事訴訟法』(有斐閣

 

司法試験受験生で知らない人はいないであろう、「古江本」。

これと過去問で演習は十分。

 

 

【租税法】

〇基本書

谷口勢津夫『税法基本講義』(弘文堂)

 

租税法の基本書といえば金子宏『租税法』が著名だが、分厚い割に記述が薄いのが難点(相続税や消費税等試験範囲外の内容にも触れているからか?)。

この本は著者が元考査委員でもあり、主にローの講義で使用することを想定して書かれている。そのため、薄いが内容はかなり充実している。

ただ、内容がかなり高度なこと・所々独自の記述があるため、『基礎から学べる租税法』を読んでから勉強を始めるべきだろう。

 

 

〇演習書

佐藤英明・増井良啓・金子宏・澁谷雅弘『ケースブック租税法』(弘文堂)

 

ローの授業で使用していたもの。

問題演習には向かず、過去問で問題演習をすべきと考えるが、百選掲載判例以外の裁判例をフォローするのに向いている。

実際、今年の第2問ではケースブック掲載のPL農場事件高裁判決がダイレクトで出題された。

 

 

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判例集については触れてませんが、お好きなものを使えばいいと思います(ただし民訴と刑訴は百選を強く推奨。解説を熟読するのが重要)。

今回はこれで以上です。