凡人のための二回試験突破講座【刑事裁判】
この記事は、「LAW BLOG」様に掲載されている二回試験攻略記事に感銘を受けたブログ主が、最近の起案の傾向や教官のアドバイスを基にバージョンアップできないか2分くらい熟考し、
「別に最高評価取れなくてもいいから、二回試験には落ちたくない」
「直前に勉強するのがめんどくさい、簿記とかほかの勉強したい」
という怠惰な修習生兄貴姉貴に贈るものです。
ですので、裁判官検察官を狙う方や、弁護士任官や留学等を見越してA(優)評価を積極的に狙う方はブラウザバックして、どうぞ。
1 問題の構成
第1問
小問(勾留・保釈等の裁判官の処分、公判(公判前整理手続含む)に関する設問)
第2問
事実認定(認定対象の要証事実は1~2個)
2 出題傾向
(75期集合起案)
〇A班
1回目:強盗傷人の共同正犯
第1問:小問(捜査報告書に対する不同意意見を受けての検察官の対応)
第2問:事実認定(財物奪取の意思連絡、事実は2個)
2回目:殺人
第1問:小問(起訴後の罪証隠滅の恐れの有無と程度)
第2問:事実認定(殺意・急迫不正の侵害)
〇B班
1回目:強盗致傷の共同正犯
第1問:小問(起訴後の罪証隠滅の恐れの有無と程度)
第2問:事実認定(共犯者の暴行の意図の認識・正犯意思)
2回目:殺人未遂
第1問:小問(弾劾証拠の請求に対する対応)
第2問:事実認定(殺意・正当防衛状況)
(75期二回試験)
事案:殺人未遂
問題:事実認定(殺意・急迫不正の侵害)
※小問出題なし
3 事実認定について
(二回試験落ちに繋がるダメ答案)
・Pの主張立証構造を無視する
・無罪の結論を出すために、無罪方向の(消極的)間接事実を認定するもの(Pに立証責任を課すという刑事裁判の原則に反する)
・結論と整合する積極的事実のみを適示するもの
・証拠の引用方法として(争いがない)とするもの(弁論主義は働かない)
・重要な間接事実に関する証言(供述)の信用性を検討しない
・Aには虚偽供述の動機があるから、AQが信用できないとするもの
・AQが信用できないから証人の証言が信用できるとするもの
・総合評価が簡潔に過ぎるもの
(検討の例)
刑裁の記録は、起案要項を除いて記録は2分冊に分かれている(公判前整理手続を含めた手続の経過や、証明予定事実記載書・予定主張記載書面の一部が記載された第1分冊と、書証と尋問結果が記載された第2分冊)。
このため、第1分冊で認定すべき要証事実の内容を頭に入れて第2分冊の証拠類を検討することが通常であろう。
民裁と違う点は、事件記録の中に認定対象の要証事実が表れていることである。通常は第1分冊の【争点整理の結果】に記載されているため、答案には記載されている要証事実をそのまま書くこと。自分で勝手に改変すると減点対象になるので注意。
要証事実を把握した後は、証明予定事実記載書をよく読んで証拠構造(直接証拠型・間接証拠型)を把握する。証明予定事実記載書に、「○○を基礎づける間接事実」と記載があれば当該論点は間接事実型であると判断できる。そのような記載がなければ、【争点整理の結果】をよく読んで判断する(一応ヒントはある)。
後は、第2分冊を検討して間接(補助)事実を抽出することになるが、事実の指摘については工夫がかなり必要なので詳述する。
(事実の認定について)
民裁では動かし難い事実をできるだけ沢山認定していくことが求められるが、逆に刑裁では重要な間接事実のみをピックアップすることが求められる(推認力が弱い事実を沢山認定しても高評価にならず、むしろ採点する教官の心証を悪くする)。一つの要証事実に対して認定すべき間接事実が1個であることは十分あり得る。
何が重要な間接事実かは事案によって異なるためここで明確な基準を示すことはできないが、殺意の場合だと凶器の種類や行為態様、犯行状況や当事者の体格がポイントになり、共謀(意思連絡の場合)だと事前の電話メールのやり取りや、事件当日の言動がポイントになると思われる(そういった意味では、刑法各論は起案前に見直すべき)。
また事実の記載方法も、推認の内容が同一であるものについてはまとめて記載することが求められる。
(例)殺意について、
×:①Aは、刃体の長さ約13センチの包丁を使用しており、その鋭利性を認識していた。
②Aは、①の包丁を両手で握り、Vと至近距離で向かい合ったままVの左脇腹に強い力でまっすぐ突き出した。
③Aは、①の包丁を突き出した結果、Vの肝臓に達する程の深さ約10センチの刺創を負わせた。
↓
〇:①Aは、Vと至近距離で向かい合い、その鋭利さを認識していた刃体の長さ約13センチの包丁を両手で握り、Vの左脇腹に強い力でまっすぐ突き出し、Vの左脇腹に包丁を刺さらせ、深さ約10センチの肝臓に達する刺創を負わせた。
直接証拠型も含め、事実認定の為に証言を使用する場合は当該証言の信用性を評価の前に検討する必要があるが、Aが事実を否認していない場合は客観証拠との整合等を示した上で簡潔に認めてよいと思われる(これに対し、Aが否認して当該証言と相反している場合は信用性を詳細に検討する必要がある。)。
信用性判断の着眼点については「刑事事実認定ガイド」参照。
(意味合い・重み含めた評価の方法について)
修習ではどの刑裁教官も、「刑事裁判に、答案の型はありません」と言うと思われる(私の教官もこのことを修習中何度も言っていた)。
「刑事事実認定ガイド」には、認定した事実の概要→意味合い→重みの3ステップで検討しろと記載されているから、原則として意味合い(推認力の有無)→重み(推認力の程度)で判断すればよい。教官の言葉を真に受けて自分で答案の型を弄る余り、採点する教官(クラスの教官とは別)に真意が伝わらない残念な結果になるよりは999999999倍マシである(勿論、意味合いと重みの項では検察起案以上に認定の過程を、常識的な経験則を用いつつ詳細に示す必要がある)。
また認定対象の事実の中には、民裁の規範的要件のように、積極方向の事実と消極方向の事実をそれぞれ認定し、最後にまとめて総合評価するケース(いわゆる「法的評価パターン」、事実認定ガイド43頁以下参照)もある。例えば、
・過失
・正当防衛の「急迫不正の侵害(侵害の継続)」、正当防衛状況
・共同正犯の正犯意思
・強盗の「暴行脅迫(反抗抑圧)」
なんかについては、法的評価パターンで論じた方がよい(意味合い重みパターンだと上手くまとめられない可能性が高い)。
従来の意味合い重みパターンでよいのか、法的評価パターンを取る必要があるかについては、予定主張記載書面や【争点整理の結果】を読んで判断するしかない(法的評価パターンの場合は、Bがこれを基礎づける間接事実をいくつか主張している)。
(答案の型の一例)
第1 結論
(要証事実)は認められる。/認められない。
第2 理由
(意味合い重みパターン)
1 間接事実第1
(1) 認定した事実の概要
(認定根拠に証言使用した場合は、当該証言の信用性)
(2) 意味合い
(3) 重み
2 間接事実第2
以下省略
3 消極的間接事実(あれば)
4 総合評価
(法的評価パターン)
1 積極的間接事実
2 消極的間接事実
3 総合評価
(その他注意点)
・主張証拠構造の説明は不要
・証拠の引用は忘れないこと(ページ数を記載する必要は無い)
・AQも証拠であるため認定の根拠としていいが、まずは書証や証言から検討すること
4 小問について
(罪証隠滅の恐れ)
罪証隠滅の恐れの有無と程度は4ステップ(①隠滅対象となる事実、②隠滅の方法、③隠滅の客観的可能性、④隠滅の主観的可能性)で必ず検討する。
起訴後は罪証隠滅の対象となる事実がかなり限定されるので注意。
(証拠意見)
不同意の場合伝聞例外の適用が考えられるが、その場合であっても証拠の関連性や必要性が問題になる(Jとしてはこの点を検討することになる)。
(その他)
これ以外の小問の出題も十分考えられる。難易度は高いが、白紙は絶対に避けること。
5 参考となる教材(☆はおススメ)
(白表紙)
刑事事実認定ガイド☆
プロシーディングス刑事裁判
(その他)
手持ちの刑法各論の基本書☆
刑事事実認定重要判決50選
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刑事裁判は以上です。