凡人のための二回試験突破講座【民事裁判】
この記事は、「LAW BLOG」様に掲載されている二回試験攻略記事に感銘を受けたブログ主が、最近の起案の傾向や教官のアドバイスを基にバージョンアップできないか2分くらい熟考し、
「別に最高評価取れなくてもいいから、二回試験には落ちたくない」
「直前に勉強するのがめんどくさい、簿記とかほかの勉強したい」
という怠惰な修習生兄貴姉貴に贈るものです。
ですので、裁判官検察官を狙う方や、弁護士任官や留学等を見越してA(優)評価を積極的に狙う方はブラウザバックして、どうぞ。
1 問題の構成
第1問
本件の訴訟物(個数、併合態様)
第2問※これ以降附帯請求を無視するという指示があることが多い
主張分析(ブロックダイアグラムの作成)
第3問以下
・小問(作成したブロックダイアグラムの一部の説明、主張撤回の理由、求釈明すべき事項の説明、手続問)
・事実認定(請求が認められるかフルで書かせるものと、特定の争いのある主要事実の存否を判断させるものがある)
2 出題傾向
(75期集合起案)
〇A班
1回目:売買代金支払請求
第1問:訴訟物
第2問:主張分析
第3問:主張撤回をJが求めた理由
第4問:事実認定(売買契約の成否)
第5問:手続問(弁論準備手続における、証拠調べにより証明すべき事実の確認)
2回目:持分移転登記請求
第1問:訴訟物
第2問:主張分析
第3問:ブロックダイアグラムの説明、判決主文の記載
第4問:事実認定(請求が認められるか)
〇B班
1回目:土地建物明渡請求
第1問:訴訟物
第2問:主張分析
第3問:主張分析の理由
第4問:Jが求釈明した理由
第5問:事実認定(通謀虚偽表示の有無)
第6問:手続問(証人尋問・本人尋問の順番の説明)
2回目:損害賠償請求
第1問:訴訟物
第2問:主張分析
第3問:主張分析の理由
第4問:Jの心証の説明
第5問:事実認定(請負契約の存否)
第6問:手続問(準備書面の提出期限の設定)
(75期二回試験)
事案:所有権移転登記手続請求(本訴)、建物明渡請求(反訴)
第1問:本訴・反訴の訴訟物
第2問:本訴請求の主張分析
第3問:反訴請求の主張分析
第4問:本訴原告の主張の位置づけ
第5問:撤回問
第6問:事実認定(売買契約の成否)
第7問:小問(適切な準備手続の選択)
3 事実認定除く設問について
(二回試験落ちに繋がるダメ答案)
〇訴訟物
・権利レベルで間違える(それ自体即死になるミスのみならず、後の主張分析や事実認定にも影響を及ぼす)
・訴えの取下げや変更を無視する(準備書面で取下げ・追加的変更がされるケースもあるので注意)
・附帯請求を書かない
〇主張分析
・附帯請求まで記載する(除外するとの指示がある場合)
・要件を全て書かない(損害賠償請求なのに損害の内容と額を書かない等)
・準備書面に記載されている抗弁以下の主張を書かない
・再抗弁と予備的請求原因を間違える(94条2項等)
・規範的要件ではないものを規範的要件とする
(検討の例)
〇訴訟物
基本的に、訴状の請求の趣旨と請求の原因(特に「よって書き」)から判断する
原告準備書面に追加的変更がこっそり隠れている可能性もあるため、準備書面を全て読んでから解答する
同種類の契約や不動産が複数ある場合は、特定の為に契約内容や不動産の種類を詳細に書く
(例)令和2年10月5日付売買契約に基づく代金支払請求権
別紙物件目録1記載の土地の所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権
附帯請求は、主たる請求1個につき1個となる
(例)主たる請求が土地建物の所有権に基づく返還請求権としての明渡請求権
→附帯請求である損害賠償請求権の個数は2個(土地と建物)
併合態様は、特に問題なければ単純併合でよい
〇主張分析
事実適示記載例集に記載があるKgやEについては、その通りに記載する
それ以外の主張については、現場で条文を引いて考える
☆主体→相手→日時→行為の順番を守って事実を記載する
(例)原告は、被告に対し、令和4年12月31日、別紙物件目録1記載の建物を代金3000万円で売った。
〇主張分析の理由
記載すべきことは、
①Kg、E、R、D等の主張の位置づけ
②要件事実記載の理由とその前提となる民事実体法の説明の2つ
〇主張撤回問等
なぜ撤回すべきなのかを考えることになるが、
①主張が実体法上意味をなさない(主張自体失当)
②主張としてはありうるが、根拠となる事実の主張が不足している
③主張としてはありうるが、主張している事実が主要事実に該当しない
④主張としてはありうるが、根拠となる事実の立証が困難である
等のパターンがある(どのパターンに該当するかは現場で判断)
4 事実認定について
(二回試験落ちに繋がるダメ答案)
・結論を書かない
・判断枠組みの検討において、「直接証拠たる類型的信用文書」の存否を検討しない
・判断枠組みが明らかに誤っている(「直接証拠~」が存在するのに第4類型で書く等)
・「直接証拠~」に該当しない文書を「直接証拠~」とする
・認定した動かし難い事実の数が極めて少ない
・動かし難い事実を並べただけで、評価を加えていない
・総合評価を書かない
(検討の例)
主張分析をして、争いのある主要事実(検討対象となる事実は問題文で指示されているのでよく問題文を読むこと)が決まったら、主要事実に関する積極・消極方向の動かし難い事実をひたすら挙げていく。
動かし難い事実の収集について、書証や尋問結果から拾うことも必要だが準備書面で争いのない事実をまずは多く探していくこと。一つの論点について、争いのない事実と書証から認められる事実、尋問における不利益証言で15~20個は拾っておきたい。
事実を拾い終わったら、それらの事実を3~4のかたまりにグルーピングする。グループの内容は事案によるが、
〇当事者の動機や経済状況等契約前の事情
〇契約書の作成経緯や締結時の行動等契約時の事情
〇債務の履行経過や訴訟に至る経緯等契約後の事情 にまとめられる。
グルーピングが終わったら、グループごとに事実の推認力等を、反対仮説を交えて評価する。後は以下の答案の型に沿って書いていけばいい。
(答案の型の一例)
第1 結論
請求原因(あ)の事実は認められる。/原告の請求は認められる。
第2 理由
(一つの主張事実の存否を判断させる場合)
1 判断枠組み
・直接証拠たる類型的信用文書の有無
・(↑が無い場合)直接証拠たる供述証拠の有無
2 グループ1
(1) 認定した事実
(2) 評価
3 グループ2
(1)以下省略
4 総合評価
(請求の認否を判断させる場合)
1 請求原因(あ)について
(1) 判断枠組み
(2) グループ1
以下省略
2 抗弁(キ)について
3 再抗弁(さ)について
4 結語
(注意点)
・直接証拠、類型的信用文書、各類型の内容は頭に入れておくこと(分からなければジレカンを読むべし)
・白表紙のプリントとして配布される学修用手引には司法研修所が想定している事実認定の型が記載されているが、記載例は事実を認定しながら評価を加える形式になっており、初級者が真似をすると事実と評価が混在していると教官に評価されかねない。
そのため、↑の答案の型のように、認定した動かし難い事実と事実の評価はそれぞれナンバリングを分けて記載するのが身のためである(実際、実務修習先の左陪席はナンバリングを分けて記載していたそう)。
ただしこの場合は、「○○である(事実②)。」のように評価において事実の引用を忘れないこと。
・評価は、
認定した動かし難い事実の評価→経験則→要証事実との繋がり(「○○という事実は、△△ということを示す点で要証事実の存在を推認させる。」)
の順で記載する(経験則は現場で創造すればOK)。
・証拠の引用は忘れずに(尋問の場合は、行番号を付す)
・総合評価の書き方は、学習用手引の記載例を参考にする
5 参考となる教材(☆はおススメ)
(白表紙)
新問題研究 要件事実
紛争類型別の要件事実(追補含む)☆
事実適示記載例集☆
事例で考える民事事実認定☆
学修用記録・手引☆
(その他)
要件事実30講
大島本シリーズ
予備試験民事実務基礎科目の過去問
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民事裁判は以上です。