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【セックスワークと給付金】個人用メモ

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10月30日に開催されました、司法修習生フォーラム分科会「セックスワークと給付金」に参加した際に作成した手控えを事務局の許可を得て公開します。

講演を聞きながらタイプしているので、実際の内容と一部異なることがあります(見出し等)。

 

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司法修習生フォーラム セックスワークと給付金
(講師:FU-KEN(デリヘル経営者)、亀石弁護士)


セックスワーク給付金訴訟
原告:FU-KEN 原告代理人:亀石B

1.性風俗業の概要
原告は風俗店(ヘルス)の元キャスト(従業員)
風俗店―ソープとヘルス 前者は店舗型、後者は店舗型と非店舗型
後者の基本プレイー「抜き」(フェラチオ、素股)
建前では、前者では本番行為が無いとされているが…実際は恋愛関係に発展して
摘発も行われているが、適法違法の境界線がかなり曖昧(経営上、本番行為を行ったキャストは首)
風営法の改正(H10)で店舗型の店を開設することが難しくなった

 

FU-KENさんのきっかけ・・・はっきりした理由ない、細かいことの積み重ね
漠然と働くことを思ったのは中学生のころ(当時不登校
「夜の街」のブーム(『歌舞伎町の女王』、飯島愛)、援助交際の漫画を読んで憧れ
性風俗に対するマイナスイメージ(貧困等)は特になかった
仕事は自分に向いていたと思う(1対1の接客)
トラブル(盗撮等、性暴力はなかったが)・性病のリスク

採用時・・・面接シートに働く理由を記入する(貯金等)が、詳しく追及することはない
お金のために仕方なく働く人は少ない(昼の仕事に加えて…という人が結構いる)

性風俗の仕事を周囲に話したことはない(関係を断つ)、最近になってようやく話すようになった
話すことによって止められることを恐れた

 

経営者になろうとしたきっかけ・・・転職するよりも、性風俗をとことんやる
女性のオーナーが身近にいた
店へのマージンが高すぎた(キャストにそれを悟られないようにすることも)
店の規模:小規模、キャスト50人前後(毎日出勤するする人は少ない、一日10人くらい)
搾取と思われないようなマージンの率、キャストの安全を重視
質の悪い客が出てこないよう、受付を丁寧にする、情報共有(ブラックリスト、ストーカー)、定期的な性病検査、料金設定

 

業界の動向・・・年々厳しくなっている(思うように稼げるのは一握り)
コロナのダメージ・・・めちゃくちゃ大きい(一定期間の休業)、キャスト間の格差
シングルマザーのキャストはかなり厳しい
営業再開後も客数は減少(3割に減った時期も)、経費を抑えることも

 

2.給付金について
休業手当:従業員を休業させた場合に国から手当が出る
小学校休業手当:小学校が休校し、勤務できなくなったときに国から手当(個人事業者・法人)
手当が出ないことに対して、当初は「そういうものだ」と思っていたが…
雇用調整助成金性風俗は対象外(別の事業者が訴訟を起こしたことはあった)
亀石Bも除外の事実を当初知らなかった

 

署名活動を行う、議員に陳情書
職業差別がクローズアップされない現状を知る

訴訟を起こそうとしても、弁護士を探すのが難しい(行政訴訟を扱っている人は少ない)
平先生にコンタクトを取って、代理人になってもらおうと考えた
弁護士が国に対して行政訴訟を提起することに対しては、正直抵抗はある(亀石B)


平先生にはまずzoomでコンタクト→弁護団を結成すること・call4によるクラウドファンディングを提案される
クランドファンディングは300万を想定→集まったのは600万、応援のメッセージも
ネガティブな反応・・・「納税してない」「反社絡んでいるから除外されて当然」
「そういう声を上げられると困る、社会に認められない(同業者から)」
性風俗事業者も社会の一員である、税金・反社については別に性風俗事業者に限られない

 

岡村隆史発言に対して・・・人の不幸を楽しみにしている点で失礼だと感じた
むしろ性風俗から昼の仕事に移る人が多い(性風俗に就いても稼げないのでは?)
ただ、業界の実態を知らないまま双方が罵り合っていたのではないか?

 

3.給付金訴訟について
意見陳述で初めて法廷の「柵」の中に入った
国側の代理人は20人以上いた
裁判長がしっかり話を聞いてくれるとは思わなかった(迫力に驚くと共に、うれしく思った)

 

陳情書を受け取ってくれた議員:3名は立憲民主党、1名は日本共産党
立憲民主党は動画で「夜の街」に対して一応言及している
与党では、菅前首相が賛成の意を示していたが、岸田現首相がこれに大反対、そのまま流れる
公明党では1名陳情書を受け取ってくれる人がいた?

 

修習生に対するメッセージ:社会は一定のシステム(訴訟しにくい現状等)で構築されている、そのシステムをいい方向に変えることはできるのではないか
もっと当事者が声を上げられるようにしてほしい

 

4.弁護団活動(亀石Bのみ)
訴訟にかかわるきっかけ・・・平先生から声をかけて頂く(風営法に関する刑事弁護を行ったことあり)
タトゥー刑事事件のクラファンの存在
→自分がこれまで手掛けていた事件の延長線上にあると思った
応援の声と同じくらい・それ以上のバッシング(同業者からのバッシングは辛い)

 

キャンプファイヤー(クラファンのサイト)でタトゥー控訴審の訴訟費用を集めようとしたのが始まり
当初は消極的意見が多数(弁護士倫理、費用の調達如何)
ネット上の影響力を持つことが重要と担当者に言われる(半年でフォロワー1万人)
リスクもあるが、弁護士が実名で情報発信する意義はある


難しいことをいかにわかりやすく伝えるかが重要―かみ砕いて翻訳する作業がワンクッション必要
嫌われることへの耐性
自分自身の中にある偏見に気づくこと

 

修習生に対して・・・キャラ(専門分野)を立てよう
専門分野で事件に巡り合う・実績を上げられなくても、分野について情報発信をしていくことによって、色々な事件に関われるようになる

 

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(感想)

日常生活では風俗店経営の実態等を直接経営者に伺う機会がまず無いので、とても貴重な講演会だったと思う。

性風俗業が給付金の対象から除外されている件については、紛れもない不合理な職業差別と評価するほかない。今回の総選挙では経済政策の一つとして給付対象の拡大の可否が争点として挙げられるべきでだったが、埋没してしまった感が否めない。

訴訟で裁判所がどのような判断をするのか(憲法違反に言及するか含めて)、今後も注視していきたい。

 

次回は「コロナ禍の労働問題」の分科会(11/6 PM2:00~)に参加予定です。

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