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令和3年司法試験合格体験記~過去問は受験生を救う~

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某お盆に24時間放映される番組は関係ありません

 

司法試験関連記事を書くのはこれで最後です(税法ガールのぞく)。

この記事は、先日阪大ロースクールと某予備校に提出した合格体験記を、公開用に加筆修正したものです。参考までにどうぞ。

勉強論と直前期の過ごし方とかの話が多いので、基本書等については過去記事を参照して下さい。

 

lawschoolreport.hatenablog.com

 

 

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0.自己紹介

経歴:

島根県出身、現在大阪府在住(執筆時点)

2015・4~2019・3 岡山大学法学部法学科

2019・4~2021・3 大阪大学大学院高等司法研究科専門職学位課程

2021・5 令和3年司法試験受験

2021・9 同試験合格、第75期司法修習生(予定)

 

選択科目:租税法

予備試験受験歴:2016~2020(2018~2020は論文落ち)

 

ブログ開設してもうすぐ3年だしそろそろ個人情報開示してええやろの精神

岡山大学で小塚真啓教授の租税法ゼミに所属し、所得税法を勉強する中で税法の面白さを知ったのが租税法を選択科目として選んだ理由の大きな一つです。

予備試験については最後までご縁がありませんでした。悲しいなぁ・・・

 

 

1.副題について

(1)はじめに

大学入試では赤本、普段の定期試験では先輩から貰った過去の試験のプリントといったように、この文章を読んでいる方は学力試験を受けるにあたって事前にその試験の過去の問題(以下、過去問と略す)を解いて、大まかな傾向を掴んで対策することが多かったと思われます。

これは司法試験でも同様です。今の司法試験は、過去問を最後まで愚直に回した受験生が勝つ試験と私は考えています。

(2)なぜ過去問が大事なのか

理由は主に二つで、

・問題の質が総じて高く、受験生が目指すべき到達点を示している

・近年の問題は過去問の「焼き増し」がみられ、再度出題された時にアドを取れる

ことです。

(最近はそうでないものも増えましたが)学説ゴリゴリの研究者が作成した演習書やバイト合格者が作成した予備校の答練問題とは違い、司法試験の問題は学者と現場で法令を運用する実務家(しかも超一流)が一緒になって作成しています。

そのため、一見とっつきやすそうな論点の問題に見えても、生半可な理解だと(受験者を落第させる)落とし穴に嵌まってしまうポイントが随所に仕掛けられているのが特徴です。評価される答案を書くためには、こういったポイントに注意して論述を進める必要があります。

 

また過去問の「焼き増し」は特に行政法・商法・刑訴法で見受けられます(特に行政法は違法性の承継等それが顕著)。会場で「これは○○年に出題された論点だな」と気付くことができれば、技術面及び精神面で大きなアドバンテージとなります。

(3ー1)短答編

短答式試験については、3科目(憲法民法刑法)と以前と比較して受験生の負担が軽くなりましたが、その分受験生全体のレベルも上がり、また問題も年々難しく複雑になっています(刑法ではそれが顕著)

短答式で足切り(各科目の4割未満又は合格点未満)になると論文式の答案が一切採点されませんし、合格点ギリギリを取って論文式で逆転することはかなり難しいこと(短答の点数と論文の点数は大体比例する)から、短答式試験で高得点を取って貯金を作ることが重要です。

 

短答式については、市販の問題集を何周も回す(問題を解く)ことがまず必須です。他の人から「何周やればいい?」とか「まだ2周しかしてない」という声を聞きますが、何周回したか数えきれないくらい回してください。また問題を解く時には、覚えている正答の肢や番号をそのまま覚えるのではなく、〇条の〇〇という記載から正しい、△という判例の判示に沿わないから誤りといったように解答の理由付けを頭の中で考えることが必要です。

 

とはいえ、普段の授業の準備や論文対策で中々短答を勉強する時間を意識して作ることは難しいと思います。勿論一日20問(100肢)と決めてコツコツ解くのもいいですが、おススメは予備試験やTKCの実力診断テストを受験し、試験前にガッと過去問を回すことです。前者は、短答を突破すれば(会場によっては)本試験と同じ会場で論文式試験を受験できます。

 

因みに私は、早稲田経営出版の体系別過去問集を使用していました。解説が短いので周回しやすいのがいいです。余白に色々書き込むことで、試験前に見直せる自分だけのオリジナル問題集も作成できます。

 

(3-2)論文編

こちらがメインですが、論文式試験の過去問についてはできるだけ早く、かつスピーディーに取り組むことが重要です。今年の問題も含めれば、1科目だけで16問あり(民事系については若干異なりますが)、選択科目は倍の32問あります。全て取組めば出題される論点はほぼ網羅することができる一方、一日一問取り組んだとしても全問解き終わるまでに5ヶ月はかかる計算となります。
 そのため、過去問についてはできるだけ早い時期から取り組むことをお勧めします。2年生の夏季休暇や春期休暇、3年生の夏季休暇は比較的時間を取ることができると思うので、そこで集中してやるべきです。私は、


40分で答案構成をする(選択科目の場合は30分くらい)
→出題趣旨と採点実感を確認し、構成の筋が合っている確認
→高順位の再現答案を読み、どこをどのように書けば評価されるのか確認
→構成の際思い出せなかった知識を基本書や判例集等で確認する


という感じで取り組んでいました。

過去問を解くときに重宝するのが辰巳法律研究所が毎年出しているぶんせき本です。ぶんせき本には出題趣旨・採点実感・問題の解説・超上位~下位合格・不合格再現答案が全て掲載されているので、この一冊で過去問演習をすることができます(個人的には、再現答案の確認は答案➀だけでいいと思っています)。

 

 

過去問は全年度やるのが望ましいですが、「時間ねンだわ」という方は加藤先生がブログで公開しているランク付けに従って、ABランクの問題を優先してやるのも手です。実際、友人と自主ゼミを組んで過去問の答案添削を行った際も、Aランクの問題を取り扱いました。

kato.blog

 

(3-3)租税法編

税法については正直ローの講義に助けられた部分もあるので詳しいアドバイスはできませんが、過去問を中心に勉強すべきことは共通しています。

ぶんせき本に対応する本として『一冊だけで租税法』があります。私はこの本を試験前めちゃくちゃ使用したので、租税法選択者は買いましょう。現在は絶版になっているので、万能書店のホームページから購入することになります。

 

また手前味噌ですが、現在「税法ガール」と称してブログ上で直近の過去問解説をライトノベル形式で執筆しています。問題の考え方を学べるよう答案例も付してありますので、ご一読下さい。

 

2.過去問+αについて

(1)はじめに

 

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ここまで過去問の重要性や活用方法について書いてきましたが、厳密には過去問だけやって試験に臨んだ訳ではありませんし、それ以外の勉強も必要と考えていますタイトル詐欺とか言わないで下さい

ただ「+α」とあるように、メインは過去問演習です。以下では、プラスして試験前にやってよかったこと又はやるべきことを紹介します。

 

(2ー1)短答編

三科目に共通しているのは、条文の素読です。憲法だと統治、民法では家族法、刑法では各論でほぼ毎年条文内容を直接訊いてくる問題が出題されます。時間がかかる論理問題と比べて、知っていれば消去法等を駆使して瞬殺できるのでやりましょう。

素読は直前期にまとめてやるよりも、一日の終わりに30分といった感じで毎日続けるのがいいです。

判例六法を使えば判例知識もインプットできるのでお得(時間はかかりますが)。

 

憲法は芦部憲法を熟読しましょう。ホントよく出ます。直前期に買って読むだけでもお釣りが来るくらい。

刑法は総論各論通じて論点の確認をしましょう。「○○説ではどういった結論になりますか?」みたいな論理問題が毎年出るので。基本刑法や辰巳法律研究所の趣旨規範ハンドブックには学説とそれを適用した事例の処理が簡潔にまとめられているので便利です。

 

(2-2)論文編

過去問を解くためには条文知識や解釈上の論点に対する判例規範、規範を導くための趣旨等が必要不可欠です。なので、趣旨規範の暗記を試験直前までひたすらやりましょう。

私は、法律用語の意義や趣旨、判例規範の暗記に趣旨規範ハンドブックを使用していました。公法系・民事系・刑事系共に分厚いですが、司法試験の問題を解くために必要な意義等は一通り掲載されています。司法試験や予備試験で出題された箇所には出題のマークがあるので、「この年に出たこの論点はどういった内容だったっけ・・・?」と探す手間が省けます。


またハンドブックには余白スペースがかなりあります。私は、その余白スペースに・LSの授業で説明された、ハンドブックに掲載されていない論点、・答練や公開模試で出題された未知の論点、・刊行当時には出されていない最新判例の内容等を書き込んでいました。こうすることで、直前期に見直すことができる自分用のまとめノートを短時間に作成することができます。わざわざ8科目まとめノートを作成するよりもハンドブックを活用した方が効率的です。

 

答練や公開模試を通じて未知の問題にどう対処するか想定しておくことも必要です。貯金との相談になりますが、公開模試は絶対に受けた方がいいです(できればTKCと辰巳の2回)。公平な第三者から自分の答案を客観的に評価してもらう絶好の機会ですし、机と椅子がズラッと並んだだだっ広い会場で答案を作成する緊張感は模試以外で味わえません。

 

3.直前期の過ごし方

(1)新しい教材に手を出さない、今までの復習に時間を充てよう

ここでいう「直前期」は、4月~5月の試験前を指します。この時期になると、「○○という参考書はやった方がいいのか」とか「△△についての最新判例は読んだ方がいいのか」といった情報が意識していなくても耳に入ってきます。

結論から言うとやらなくていいし、時間の無駄です。参考書については今から取り組み始めても消化不良に終わることが殆どですし、最新判例については仮に出題されても知っているかいないかで大きく点数が付かないのが実情だからです(コテコテの重要判例なら別ですが)。

勉強できる時間は限られており、貴重です。今まで読んできた基本書を通読してインプットに努めたり、過去問を解きなおしてアウトプットしていきましょう。

 

(2)一日一日を淡々と過ごしてメンタルの安定に努めよう

直前期は普段「まあしほうしけん何とかいけるっしょ~」としている人ほど精神がおかしくなります(私がそうでした)

ここで焦って(1)みたいなことをすると余計精神がしんどくなるので、「今日はこれをやったら帰る」「勉強が終わったら音楽を聴く」といったように、簡単な計画を立てて一日一日を淡々と消化していくのがいいと思います。

勉強の合間に音楽を聴いたり、軽い運動をしたりするのもいいです。私は好きなロックバンド(アジカンサカナクション)の曲を聴きながら基本書を通読していました。

 

ただ、SNS(特にtwitter)はやめた方がいいです。TLを眺めているだけで時間が溶けますし、上級者の受験テクニック()が流れてきて精神がしんどくなることもありますので。せめて一ヶ月前からはログアウトしてアプリを消して下さい。

 

(3)体調を整えよう

(2)と内容は重なりますが、食事や睡眠にも気を遣った方がいいです。具体的には、生ものやドカ食いを避ける、6~8時間は睡眠時間を確保するとかですね。これは試験期間中も同様です。もしもの場合に胃腸薬を試験用に持っていくのも方法です。

 

4.おわりに

今年の合格率は受験者の4割という結果になりましたが、数年ともすれば十年勉強してきたガチガチの受験ファイターの中の4割ということになりますので、以前として厳しい試験であることは明確です。

阪大ロースクール全体の合格率は、残念ながら受験者全体の合格率を僅かに割っています。ロースクールの勉強だけしていても司法試験に必ずしも合格できないのが現状ですが、試験対策をきっちりやれば十分合格できるのが今の試験だと思います。

最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。読者諸兄の最終合格を心より祈念致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、

直前期はtwitterを閉じろ!!

後悔しても知らんぞ!!!

(大事なことなので2回言いました)